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アメリカ、ソ連の核軍拡競争にイギリス・フランス・中国・インド・パキスタン・イスラエルが続き、さらに北朝鮮など、新たに核兵器保有をめざす国は後を絶ちません。また、核兵器開発では2060回もの核実験が行われてきました。今日の世界には核兵器が15000発もあり、そのうち数百発は数分のうちに発射できる体制にあります。だからこそ核兵器廃絶へ一歩でも進もうと、2017年7月、「核兵器禁止条約」が国連で122カ国により採択されました。
国際NGOの「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)はこれを実現するために、各国に様々な働きかけをしてきました。2017年のノーベル平和賞はその功績を認めたものです。受賞の背景には、被爆者たちの貢献がありました。体験を世界で語り、悲惨さを訴えたことで核廃絶への共感を呼び起こしたのです。今の課題は、核武装した9カ国がこの条約に反対していることです。「アメリカの核抑止力に依存する」日本政府も反対の立場です。核保有国同士の不信からいまだ条約の発効に至らない中、2019年11月24日、ローマ教皇フランシスコが長崎、広島の被爆地を訪れ、世界に「核廃絶」を訴えました。教皇は軍拡競争を「途方もないテロ行為」と強い表現で指摘し、核兵器を含む大量破壊兵器の保有そのものを厳しく非難。
「核兵器のない世界は可能で必要だ」と訴え、各国の指導者に核廃絶に取り組むよう促しました。教皇が発した力強いメッセージは被爆者をはじめ平和を願う世界の人々に大きな勇気を与えました。
2021年1月22日に50カ国・地域で発効した「核兵器禁止条約」は核兵器の開発から使用までを全面的に禁止する史上初の国際規範です。しかし唯一の戦争被爆国である日本は条約に批准していません。本来なら核廃絶に向け、リーダーシップをとる立場です。条約に批准し、被爆国としての知見を世界に発信するよう、日本政府を動かすのは私たち一人ひとりです。(参考:「学ぼうヒロシマ中学生新聞」、『核兵器はなくせる』、毎日新聞、東京新聞、朝日新聞)
[イラスト:木村陽子さん]